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印刷機の電源を落としながら

いやはや、こ忙しい一日だったのだ。

降りかかってくる火の粉を、あっちあっち言いながら払っているだけで日が暮れた。

はたと気付いて一歩も前進せず。

崩れ落ちてくる壁を左手で支え、右手では火の粉を打ち払い、そうこうしているうちに屋根が落ち掛かってくる、サイレンは鳴り止まない。そんな感じだ。

誰もいなくなったオフィスで、疲れた印刷機の電源を落としながら自分も一緒に息をつく。


魂は夢想の中に安住を求める。何も自然のものばかりを好むわけではないが、心にある安息の原風景は、たとえば誰しもが知っているだろう、幼い頃の午睡の情景。しんと静まったなか、聴こえてくるのは鳥の囀りや、葉擦れの音。窓の外にはそういえば、銀杏の大木があった。あるいはしっとりと夜気の香る真夜中に、月光の作り出す影法師。白粉花の匂い。そういうものどもが、そのときは気にも留めなかったけれども胸の内にたしかに。


自分は面白味のない人間だとしみじみ思うのだけれど、面白くないのは世間の方だと思えなくもない。相応しい場所が、あるいはあるのかもしれないなどと思うのは、これまた夢想なのか。
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